始まりはとある合コン。相手は全員某大手企業の社員。オイスターバーで生牡蠣からワインボトルまで、たらふく飲み食いさせてもらい、かなりの高額だったにも関わらず全おごり。楽しく飲み食いさせてもらい我々の中では神合コンとなった。

その後、その中の一人から「また会社のメンバーを集めるから合コンをしよう!」という打診がきたのでもちろん快諾。彼はクリス松村系のいわゆるラクダ顔だったので以後ラクダとします。問題のメッセージは人数や日時など、合コン前の定番のやり取りの中にさらりと混ざっていた。

 

ラクダ
ラクダ
女の子は一人3000円でいい?

 

当日その場で言われるのであれば普通に払うのに、こんな風に事前にラインで打診されたのは初めてで正直少しびっくりしてしまった。前回かなりの金額を奢っていただいたこともあり、私個人としては納得ができるものの、他の女性陣メンバーにとってはそんなことは知る由もない。女性メンバーには事前に説明し、快諾してもらうことで当日を迎えた。

合コンは3対3。その席に座っていたのはなんと…

 

ラクダ。

前回の合コンの幹事。

と、新メンバー。

 

3対3で私の知らない人は一人だけ。なんだこの旨味のない合コンは…心が一気に砂漠化していく音が聞こえる…。そんな中で合コンは始まった。前回の合コンの幹事くん(以下、幹事くん)は私との合コンだと知らなかったようで、自分が来てしまったこと、代打でたまたま来たことを私にひたすら平謝り。

 

ラクダ
ラクダ
……。

お互いに謝り倒すなか、見て見ぬ振りするラクダ…。しかも私は気づいていた。お店の予約名が幹事くんの名前になっていたことを。つまり幹事くんが代打で来たというのはラクダを立てるために咄嗟についた嘘。ラクダは自分が幹事なのに彼に店探しや予約をさせてメンバーの一人として最初から駆り出していたのである。

 

「いえいえ、出会いを期待したのにまた私がいたなんて幹事くんはむしろ被害者でしょう? すべては采配したラクダさんが原因ですよ!」

「幹事いいヤツでしょ? また会えて嬉しいじゃない! なんで? ダメなの?」

 

ジャブを打つもラクダは一切まったく悪びれる様子もなし。乾燥だけでなく、ディスにも強いラクダ。乾燥地帯でも生き抜けるよう、塩分濃度の非常に高い水も飲むことができる強い進化を遂げた動物なだけあって、こんな嫌味をすすったところで屁でもなさそうである。ラクダの後輩にあたる幹事くんは可哀想に、ただラクダのご機嫌を伺うしかないようだった。

その上、会社の同僚を連れてくるという約束だったはずが、もう一人のメンバーが先日飲み屋で出会ったよく知らないフリーター(以下、ギターくん)であることが発覚。

 

「自由に生きていて、ギターをやっているんだって。いや〜いいよね〜! 憧れない? カッコいいと思うでしょ?」

 

褒めそやすように見えて端々にギターくんを見下しているようなニュアンスが垣間見える。どうやら人がよく、言いなりにできる幹事くんと、自分より下に見ているギターくんを置くことで自分が一番(あくまでもラクダ目線)である状況を作り出し、女性陣の心を総取りしようという魂胆のようだった。

見え透いた幹事MAXの法則(幹事が自分以上のメンバーを連れてこない)を発動させ、合コンマナーの禁じ手、被りメンツや約束を反故にするなどの数々の仕打ち。せっかくかわいい子を揃えたのに話が違っては友達にも示しがつかない。

一方でかわいい子を前にテンションが上がっているラクダ。反して出会いが1名しかない合コンに3,000円を支払うことが確定している私…。ラクダ、お前は絶対に許さない…この合コン砂漠は絶対にお前のオアシスにはさせない…そう、絶対にだ!!!

怒りに打ち震える私は即座に女性陣にラクダの愚行を連携した。開始早々ラクダにドン引きする女性陣。自己紹介ではラクダには深く触れず他のメンバーを持ち上げることに。幹事MAXで自分がチヤホヤされることを企んでいたラクダに一番堪えるのがこれだと踏んだのだ。

特に感じの良かったギターくんを中心にみんなで盛り上がっていると、みるみる機嫌が悪くなるラクダ。話にカットインしてどうにか自分が主役になるよう話題を横取りをする。ラクダは自分が大好きらしく、つまらない自分の話を延々と続けるので、すかさず会話のボールを奪い、再度ひたすらギターくんを持ち上げながら話題を掘り下げ続けた。

それが気にくわないラクダは女性陣に話題を振ってきた。が、名前を間違っている。一度ならまだしも何度指摘しても間違え続けるラクダ。いい加減堪忍袋の緒が切れ始める女性陣。

 

お前の背中のコブを叩き割ってやろうか??!!

 

ヒトコブなのかフタコブなのかもわからないラクダに苛立ちを抑えきれず、直球で失礼な点を指摘してもまったく堪えないどころか、女性陣の乾いたリアクションにも気付かない様子。さすがラクダ、乾燥に強すぎる…。

2時間が過ぎ、合コン砂漠を耐えながら歩き続けた我々の先にやっと街が見えてきた…。そう、我々に約束の3,000円を支払う時が来たのだ。ここから出られるなら、もうさっさと払って早く街で水を飲みたい…。実質すべてを取り仕切っていたのは幹事くん、お会計を渡されスマートに一言。

 

幹事くん「女性は1,000円で」

ラクダ
ラクダ
いや、3,000円だよ

 

幹事くん「女性は安くしてあげたほうが…?」

ラクダ
ラクダ
いや、3,000円って話になってるから。ね?

 

ラクダはびっくりして、大きな目をさらに大きくしながら言った。いや、そうなんだけど…そうなんだけど、どんどんと我々の心を乾かしてくるラクダ。もう蒸発する水もないんだよ…誰か…水を…私たちに水をください…我々はもう瀕死なんです…。とっとと払って帰りたい。3,000円を支払い、店の外で男性陣を待っていると現れたのが幹事くん。

 

幹事くん「これ、ラクダさんから」

 

と一人1,000円ずつ握らせてきた。幹事くん…君は後輩の鑑や…。あの流れでラクダが金を出すわけがない。女性陣のドン引きを察して先輩を立てようと彼が自腹でお金を渡そうとしてくれているのは明白だった。

なにも知らなかった幹事くんは悪くない上に、実質の幹事役を丸投げされた被害者であること。そのお金はあなたのものであることはわかっているから受け取れないこと。そしてお気持ちだけいただく旨を伝え丁重にお断りをした。

 

 

 

当然のごとく二次会のお誘いは振り切り、逃げるようにして銀座の駅に向かう我々。早くこの乾いた心に水分補給がしたい…そうだ、今日は嵐のLove so sweet でも聞いてウォオッオッオ〜〜〜して心を潤そう。こんなヤバイ人に出逢う季節二度とない〜♪

しかしその瞬間、後ろから気配を感じた。 あれは、まさか…蜃気楼?? いや、猛スピードで走ってくる幹事くんだ!! なぜ!!!

 

「ラクダさんが…はぁ…連絡先を聞いてないからと…はぁはぁ…」

 

銀座のど真ん中を50m走コースよろしくパシらせて、遠く後ろで幹事くんの動向を陸上部監督のように厳しい顔で見つめているラクダが見えた。あれも蜃気楼ならいいのに…

お互いラインで繋がっているので、後でグループを作ればいいと突っぱねられたと伝えるようお願いし、我々はすぐさま家路に着いた。なぜ後輩を走らせた…。すべてがスマートじゃなさすぎて、もうこの砂漠では恋が芽生えるどころか雑草の一本すらも生えない。

しかしまだまだ終わらないラクダの暴走。ライングループができたものの、何かがおかしい…。そう、メンバーにギターくんがいないのだ!!

一番チヤホヤされていたギターくんに嫉妬をしたラクダは、彼をライングループに加えないという方法で自分と下僕である幹事くんのみ女性と連絡を取れる状態にし、望み通りにことを進めようとした模様。

すべてが浅はかすぎる。そのくせ女性陣全員には、さっそく個々にお礼メールを送っている。しかもほぼ同じ文章でまた飲みたいと。

私は「いや! 懲りました!」と返信。

ラクダ
ラクダ
マジでー? 飲み会やりましょうよ

人間は体の1割の水が失われると生命に危機が及ぶが、ラクダは4割が失われても生命を維持できるだけあってメンタルが半端なく強すぎる。私たち人間の心はもう5回くらい死亡しているのに…

しかしここまで自分のことしか考えず、周りを振り回しておいてよくこれが言えたな。この強すぎる生き物には私が責任を持ってトドメを刺さなくては。

 

「金額の事前提示。たった二度目の合コンで被りメンツ。後輩をパシリ扱い。一度ならまだしも永遠に友人の名前を間違え続ける。これでもう一度合コンしたいと思う女性がいると思いますか? さすがに慈善事業ではないのでいいお歳をしてこのような事をなさる方とは関わりたくありません。失礼します」

 

とすべてをぶちまけこの地獄のような砂漠を脱出したのでした。目先の自分の欲望と利益しか見ず、相手目線が抜け落ちたまま行動すると結局何も得ることができませんよ、というお話。ラクダは今も背中のコブで命を繋ぎながらどこかであなたのそばを彷徨っているかもしれません。

 

あーーーーー!! 水うめーーーーーーー!!!!!!!