結婚になかなか踏み切らない彼と別れようか…でも今から一人になって、新たにいい人が見つかるんだろうか…。

アラサーになり刻一刻と歳を重ね、こうしている間にも自分の女としての価値が落ちていくのではないか? と不安に押しつぶされそうになりながらこれからを悩んでいたある日、友人から合コンに誘われました。

合コンで出会った彼は、ポジティブでよく笑う人だった

その合コンで出会った彼はよく笑う人でした。話すたびに明るくハハハと笑い飛ばすその姿がとてもポジティブで、私の鬱屈とした気持ちを一気に吹き飛ばしてくれるようで一気に気になる存在に。パーマのかかったヘアスタイルもオシャレ。

「今の彼に固執しなくても他にもいい人がたくさんいるのかも」と前向きな気持ちにさせてくれました。その上結婚願望もあり、次付き合う人とは結婚がしたい。おまけに婚約指輪も○00万はかけたいと。お年頃の女子としてはよだれがマーライオン状態になるほど垂涎ものの条件。

その日の帰り、幹事経由で彼も私を気に入ってくれていると聞き、すぐに次のお誘いラインも来て心の中でガッツポーズ。次のデートまでマメな連絡をくれるところも嬉しくて、私のマーライオンは決壊しそうなくらい氾濫していました。

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彼はラインで私に宣言をしていました。

 

「前回は俺の話ばかりしてしまったから、今度はなでし子ちゃんのことを色々知りたい! 根掘り葉掘り聞くから覚悟してね!」

 

はい、覚悟していました。しかしいざ当日、前回と変わらず彼はひたすらに、ただひたすらに自分の話をし続けました。根も葉も掘られずそのまま待ち続けている私。それどころか会話に口を挟む隙もありません。だいぶ時が経ちやっと思い出したように私に質問を投げかけてきたものの、私が答えるや否や

 

「わかるわ〜!!」

 

瞬時に話題を盗み、またずっと彼のオンステージ。この話題窃盗犯、刑法で取り締まれないのか?

トーク泥棒にもやつくその後も受験、就職、転職、現在に至るまでの彼の生い立ち、中学からの彼女遍歴から最近気に入られた女性の話、そして彼女の何がダメだったかまで、年表が作れそうなほどの彼の歴史の講義をびっちりと受講することとなりました。この講義、履修した覚えはないんですがテストもあるんでしょうか…。

 

いいや(118)御(5)免だ。鎌倉幕府

 

鎌倉幕府はもういい国(1192)じゃないんだよなぁ…。この講義も御免だなぁ…などと年号語呂合わせを思い出しながら話をぼんやり聞いていました。そしてその内容にふんだんに散りばめられた自分アゲ。

この人は私が好きなんじゃなくて、自分が大好きなんだな…。自分の話題にすご〜〜い!! と言ってもらって気持ちよくなっているだけ。あれだけの水量を誇っていたマーライオンの水量が一気に怪しくなり、小便小僧程度になってきた頃、彼はまたアピールを始めました。

 

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「結婚願望があり、次付き合う人とは結婚前提にお付き合いをしたい」
「婚約指輪は○00万はかけたいと思っている」

あんなに気持ちの熱量を上げさせたこのフレーズも、こうなってしまうと逆に気持ちを冷静にさせます。これ、○00万言いたいだけじゃないのか? 恋の魔法が解けてくると不思議と視界が明瞭になってくるもので、最初はオシャレに見えたパーマもただのおばさんパーマに見えてくるし、話すたびにハハハと笑いポジティブに見えていた姿も、よく見たら自分の話に毎回自分でウケて爆笑してるだけ。

あばたもエクボとはよく言ったもので、好きなときはなんでもプラスに見えていたものが一気にマイナスに見えてくる。恋の魔法で0.00002に落ちていた視力が魔法が解けた瞬間5.0になり、色々なアラが見え始めてきました。そんな中、この講義にやっと一筋の光が!

 

「さてそろそろ」

 

きた!! お会計!!!

講義の時間にやっとピリオドが…!

 

「2件目行こうか!!!」

行こうぜ!! ピリオドの向こうへ!!

One night も時間を割きたくない。One time carnival fun fun〜と軽快に1軒目で帰りたかった私。手切れ金に会計の半分を渡そうとしても彼は頑なにお金を受け取らない。

 

「2軒目払ってくれればいいからさ!」

 

それは女子にも好意がある時だけ通用するや〜つ〜〜!

 

巻き込まれ〜〜てく〜〜彼の手法に〜〜♪

めちゃくちゃ帰りにくい雰囲気に。

綾小路翔ならぬ袋小路状態な私…

わかったよ…一杯だけ…

 

次のお店で始まるのはもちろん彼の歴史、2限。だれか終業のチャイムを鳴らしてくれ!! 和田アキ子があの鐘を鳴らしてくれてもいいし、TOKIOが山口メンバー不在の中ディンドンディンドンダンディンドンしてくれてもいい。除夜の鐘でも自転車のベルでもなんでもいい。鐘なら!! なんでも!!!

そんな願いも虚しく、また彼は私に口を挟む隙を与えずつらつらと自分の話を続ける。小便小僧の水流ももう残尿程度の勢いになっていた。

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そして出会ってから3時間ほど経過した頃、彼はやっと気づいた。

 

「そういえばなでし子ちゃんの話をほとんど聞いてないね! 話聞かせてよ!」

 

お主…ネタを出し尽くして満足したから私に振ってきたな?? しかし時すでに遅し。私の心は貝になっていた。何も話したくないし、これから怒涛の質問が降り注いでも楽しく明るく返せる自信がない。だがここは大人の対応。一応聞き返した。

 

「じゃあ何について聞きたい?」

 

「なんでも!!」

 

なんでも!!!! なんでも!!!!

 

脳内でそのフレーズがエコーする中、彼は一向に質問してくる様子がない。まさかの…フリートーク!!!! 何から語るべきなのか。そもそも私について知りたいと言いながら、質問を投げかけず話題を丸投げとはこれいかに。あまりの暴投にフリーズする私へ畳み掛けてきた彼。

 

「ホントなんでも! 恋愛でも! なんでも!!」

 

なんでも!!! なんでも!!! なんでも…。

 

出生時間から今現在に至るまでをかの名曲「ロード」ばりになんでもないようなことまで13章構成でこんこんと語ってやろうか。コミュニケーションとは何か、頭の中でぐるぐると駆け巡る中私は考えました。今後関係を持つ予定の無い人に個人情報を語りたくもないし、気に入られても困る。なんでもいいと言ったな?

 

「はい! 私の趣味は海外旅行です!」

 

その後私が旅をしてきた数十カ国の魅力をひたすらご紹介させて頂きました。旅行をあまりしたことがない彼にとって海外旅行は未知の分野。口を挟ませず、個人情報を晒さずに一方通行のトークを投げ続けるには最適の話題。会話の的を得ないおかしな奴として嫌われようと淡々と話し続けました。

あとは私のターン。キリのいいところで電車を言い訳にあの鐘を鳴らすのはわた〜〜し〜〜〜!! と閉講し、彼が送ってくれようとするのを「駅でトイレ行きたいから!」と振り切り、「待つよ」と縋られたのも「恥ずかしいから! 先帰って!!」と乙女、う◯こを装いなんとか解散。

あれだけ溢れ出ていたよだれのマーライオンは今やもう干ばつ地帯。

 

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帰り道、彼からのお礼と次回デートを打診するラインには当たり障りのないお礼のみ告げ、その後返信をしませんでした。

と、ここで終わらないのがこのお話。ネトスト検定1級の私は彼のプライベートなSNSを把握していました。見なきゃいいのに、そう見なきゃいいのに見てしまったのが愚かなこの私。そこに並んでいたのは数々の私への罵詈雑言。要約すると、

 

「今までチヤホヤされてきたことにあぐらをかいて、コミュニケーション能力を磨くことを怠り歳を重ねてきた女は有り得ない。歳を取るほど価値が落ちて周りが相手をしなくなる云々」

 

チヤホヤされてきたかはさておき、プライドの高い彼の次のお誘いをスルーしたことがどうやら癇に障ったらしく、さも自分がふったかのように私のコミュニケーション能力への批判がつらつらと書き連ねてありました。

なんか…やばいモン見ちまったな…。画面をそっと閉じ、友達と笑い飛ばしてその日は眠りにつきました。一人がただ話すだけの一方通行ではコミュニケーションに成り得ません。お互いが気持ちよく会話のキャッチボールをすることが真のコミュニケーション。

婚活に限らずとも人との関わり全てでこれを忘れずに交流をしていきたいものですね。

ディンドン♪